対策する前に、まずは敵を知ろう
クマネズミの正体と被害
⑦特徴
ネズミ以外に、馬、熊、犬、猫、モグラなど特に真獣類(1子宮類)と呼ばれる哺乳類がいる。これらの哺乳類の切歯数は基本的に上顎6本と下顎にも6本の切歯がある。ところがネズミ類には上顎に2本、下顎にも2本しかない。そしてこの切歯は非常に大きくなっている。切歯が上下2本ずつしかないために、この本数をカバーするかのように、ネズミの切歯は一生死ぬまで伸び続ける。
そのためネズミは何かを常に齧っていなければならないのである。
⑧運動能力
クマネズミはスリムな体に細くて長い尾を持っている。やせ型の体は身軽な動きを助けるし、長い尾はこずえの上で均衡をとったり枝に巻きつけるときに役立つ。とくに手足の裏側には盛り上がった肉球があって、その肉球にはよく発達した吸盤の役割をする細かいヒダがある。こうしたクマネズミの体の特徴により、曲芸師のように電線をいとも簡単に渡ったり、パイプを登ったりする能力に優れているから、都市が寝静まった後に、ビルの占拠はもちろん、空調機のダクトの周りからもやすやすと住居に侵入することができる。
⑨巣作り
ネズミたちにとって、冬は厳しい季節である。夏から秋にかけての繁殖でネズミの数が極端に増え、多くの食料が必要になるのに、逆に食料の供給が減ってしまう。そこでネズミたちは、秋の終わり頃になると、絶好の住み家となる人間の家(天井裏など)に巣材として、断熱材、ビニール、ティッシュ、布切れなどを持ちこんで巣作りをする。巣には食べ物を貯めたり、あるいは体内に脂を貯めたりして、越冬のためのエネルギーを確保する。
こうして家ネズミは人間の蓄えを横取りして食べ物を確保して生き延びる。
⑩発生
人間の建物内に入り込んで、悪さをするネズミ(家ネズミ)の代表は、クマネズミ、ドブネズミとハツカネズミの三種である。そのほかにも数種が家ネズミまたはそれに近い行動をとるが、ハツカネズミを除けば、そのほとんど8~9割がクマネズミである。クマネズミが発生した場所は、アジアの一角であり、マレーシアなどの東南アジアかまたその周辺である。人類に寄生するようになったのもこの地域で、日本には1970年頃から、材木などの貨物とともに運ばれ、侵入繁殖した可能性が高いといわれている。
⑪被害(火災と病原菌)
ネズミによる第1の被害は火災である。ネズミが原因の火災、社会問題化した瞬間湯沸かし器、この湯沸かし器内に作られた巣に引火した火災も珍しいものではないと報告されている。クマネズミが原因の電気・通信配線、パソコンの配線、あるいは防災システムの事故も年々増えている。
日本ではまだ電線や電話線の対鼠規準は定められていないが。いずれ定める時がくるであろうと、すでに専門家は指摘している。周知のように電気系統は非常にデリケートで、電線はネズミに齧られれば漏電の危険はもちろんのこと、尿を掛けられても通電して故障する。とくに銀行のオンラインシステムが被害を受ければ、庶民の生活にも甚大な被害をもたらすはずである。
第2の被害はレプトスピラ症あるいは腎症候性出血熱に代表される病原体の発生である。レプトスピラ症はレプトスピラという細菌により引き起こされる急性の熱症の疾患で、風邪によく似た軽い症状から、腎障害などを伴う重症型(ワイル型)までさまざまな症状が報告されている。
また腎症候性出血熱はネズミのフンや尿の中に病原体であるハンタウイルスが排泄され、直後あるいは間接的に感染する感染症である。
またネズミ一匹に1,000匹以上寄生しているダニも痒みあるいはアトピー、気管支炎などを引き起こす原因となっている。このようにネズミは健康上無視できない多くの病原菌を抱えている。