対策する前に、まずは敵を知ろう
クマネズミの正体と被害
①被害状況
天井裏でネズミがガサガサゴソゴソなど、１９９８年（平成１０年度）の都道府県別ネズミの発生状況（厚生省の環境整備課による）は、東京都12,089件、大阪10,116件、福岡7,098件と都市へのネズミの発生は想像を遥かに超えている。とくに雑居ビルや飲食店の多い地域から、ネズミは戸建ての住宅地にまで被害が広がり、行政はもちろん、民間のネズミ防除会社もフル回転でも追いつかない、きわめて危険な状態にきているのが現状である。
ネズミが増えすぎて閉鎖された居酒屋はもちろん、デパート、スーパーの商品を齧り、食中毒を起こすリステリア菌、あるいは腎症候性のウイルス源、また配電盤からパソコン配線を齧られ、漏電による火災の原因も多く報告されている。
東京都ではネズミに関する苦情や相談は９７年まで年間10,000件で推移していたが、９８年には14,000件を突破、2001年（平成13年）にはネズミの発生が20,000件弱まで増加。
その後、多少減少したものの依然として16,000件前後で推移している。
このようにネズミによる電気事故や火災の原因はもちろん、布団の中に巣をつくるなど、高齢者宅への被害が多発している。
②発生の原因
ネズミが増える原因としてゴミ問題がある。集積所にゴミを出しっぱなしにしている関係でエサが豊富になる。このゴミにはネズミ、カラス、野良猫が集まる。ネズミは体重の四分の一から三分の一の食料を毎日食べ、エサがなくなると共食いをすると言われている。またネズミの増える理由には、近所で古い家を壊したときにネズミが出てくる。ネズミには縄張りがあり、その縄張りが壊されると他所へ移動する。
現状では都市開発などによる解体工事の際、古い建物あるいは土木工事の現場から大量のネズミが発生する。とくに現場の作業員がネズミに関する認識と知識が低い場合、ネズミを駆除するどころか逃がしてしまう結果につながり、ネズミの被害が小さくなるどころか、拡大の一途をたどっているのが現状である。
③住宅事情
一方ネズミの侵入を許す家には構造上にも問題がある。日本の戸建ての家（日本家屋）はぴったり隙間がないように見えて実に隙間が多い。床下の通気口が壊れて侵入されるケースも約60パーセントにのぼる。
ネズミはガス台の下から配管を伝わってくる。床下の家の基礎からも、電気のメーターからも侵入する。500円玉（約2，5㎝）の隙間があればネズミはどこからでも侵入する。
新築でも隙間が多く、行政はもちろん、私たち民間の防除業者にも、総合的かつ高度な戦略的防鼠対策が求められている。
④繁殖力
クマネズミは知能指数がドブネズミの3倍あり、学習能力に優れ、繁殖力も異常なほど旺盛な生き物である。体重約150～200グラム、体長15～20㎝でドブネズミより一廻り小さい。クマネズミが食べる食物は、体重の三分の一で、胃が小さく消化力が強く、次から次に食事を続ける。出産はおよそ21日間で、4日に1度は発情するほど性欲と交尾の回数が多い。一回の出産では平均8，5匹、最高では一回に18匹産んだ記録もある。
正常な時のネズミの交尾は、まず、オスはメスかオスかを見分ける。そして、成熟したメスでも、オスを受け入れて交尾できる状態（発情状態）にあるものと、そうでないものを見分ける。
⑤交尾
オスは、成熟して発情したメスを見つけると、そのメスを追いかけていく。メスは逃げ出し巣の中にもぐり込み、すぐに向き直って首を出し、オスの方を見る。
オスはこの巣のまわりを走りながら、求愛のダンスをする。ダンスが終わったところでメスが巣から出てきて交尾が行われる。交尾のとき、オスはメスの首を2～3秒柔らかく咬む。出産したメス、つまり、生まれたメスの子どもが成長して出産能力を持つのは約２ヶ月後である。つまり数字上の計算では、一対のネズミが交尾しと出産を続け、その子どもが順調に育ったと仮定すると、単純な計算でも一年間にネズミの数は何と9,364匹になり、繁殖力は言葉を失うほどに凄まじく、ネズミ算という言葉はここから生まれている。
⑥種類
ネズミは哺乳類の一員である。物を齧る（かじる）歯をもった生き物で、最も繁殖したグループとして知られ、約1,000種類の仲間がいる。このグループは生物学的には、齧歯目（げっしもく）（類）と呼んでいる。この齧歯目の中にはネズミの他に、リスやビーバーのグループとヤマアラシやチンチラのグループの三つが含まれている。それぞれ物を齧るという特異な習性を持つ種類が多い。
世界の哺乳類の中でこのネズミ類は、どの位の割合を占めているかというと、4,008種と数えられる中で、そのうちの約四分の一の1,591種といわれている。
そしてその中の64％1,011種がなんとネズミの仲間である。
